プロローグ 「文野ともえ、面接に向かう」 文野ともえ(フミノトモエ)は、東京都内にある私立の共学の高校に通う2年生である。 この高校の学生の多くは進学を希望し、超難関に送り出すスーパー進学校と言う程ではないが、「進学する」と言う希望は多くの卒業生が叶えてきた。とは言え、ガツガツ勉強するタイプは少数で、マイペースがほとんど、学校の流行語は、「いつやるか?今でしょ!」の逆を行く「いつやるか?そのうち!」であった。教室でも部活動でも、これを二人組になって言い合うのがこの学校の挨拶のようなものである。最近では、先生も面白半分、生徒に「いつやるか?」と問い掛け、お約束のように「そのうち!」と返事が返ってくるのを楽しんでいる。 校内での流行語の話はさておき、そのような雰囲気(継続的な文化、校風とも言える)のため、2年生、特に夏休みになると、ことさら多くの学生がアルバイトをはじめる。ともえも例外ではなかった。今までアルバイトを経験したことは全くなかったが、暇を持て余しそうなこと、使い道は考えていないが貯金に興味を持ちはじめたこと、そして何よりも周囲の友達がそうし出したことでアルバイトをしようと考えていた。 インターネットや友人の口伝で探すのが通常だろうが、ともえはとっさに本屋のアルバイト募集の張り紙を思い出す。そこそこの繁盛具合の本屋である。インターネットに販路を取られる傾向のある書店業だが、地域がら、若年層が少なく、インターネット販売よりも店頭で立ち読みしてからの購入を好む世代層が多く集まっていた。ともえはその本屋に直接出向き、夏休みの間に集中的に、そしてその後も継続して、時間は制限されるがアルバイトをしたいと申し出た。店長らしき人と面接日を決め、その日に履歴書を持ってくるよう伝えられた。 ともえは、面接までに少しは準備をしておこうと、就職ではないが何か本を読んでおこうと決める。アルバイトの面接ながら珍しい発想である。就活中の兄に聞いてみると『面接の達人2014 バイブル版 (MENTATSU)』(中谷 彰宏氏著)や「就活ではロジカルシンキングが絶対に見られる!」とのことで『ロジカル面接術 2014年基本編 津田久資氏、下川美奈氏、 上原隆氏』を薦められる。 こういった面接の「達人」、「術」については、実際の就活時に詳しくということで、ともえは後でじっくりと読むことにした。結局、面接では、販売業としてのともえの印象の良さ、真面目さがうかがえたことも店長の印象を良くしたが、取立てて深い質問もなく、家が近いことが採用の決定打であった。 高校2年の1学期を終了、夏休み初日からこの本屋でのアルバイトがはじまる。そしてここから、ともえの立ち読みが始まる、さまざまな価値観への接触、体感がはじまる。 <<(1)はじめに もしビズ!とは    (3)ともえ、立ち読みを開始>> ※ここに掲載される本の引用(注釈によって記載)を除く、ストーリーはフィクションです。       ヒューマンマネージコンサルティング株式会社 人材総合コンサルタント 研修トレーナー 眞下 仁(ましも ひとし)